認知症ケア

認知症の人の心を掴む5つのステップ-ユマニチュードを基に考えよう-

認知症の人と接する場合、大切な「5つのステップ」というものが存在します。

ユマニチュードは、認知症の人にとって大変有意義な技術です。しかし、認知症ケアはケアを行う場面だけでは成り立ちません。ケアを行う前から認知症ケアは始まっているのです。

今回は「5つのステップ」について書いていきたいと思います。

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まずは出会いから

私たちは誰かに会うときに、突然家に来られたらびっくりしますよね?家族であれば話は変わりますが、赤の他人が我が物顔で部屋に入って来られたらびっくりしますし、場合によっては怒りを感じる人もいるかもしれません。

認知症の人も同じです。

部屋で静かに休んでいたら、急に知らない誰かが入ってきて、目も合わせずに「机を拭きますねー。」や、「体を拭きますねー。」と言われたら、あなたはどう思いますか?

私だったら嫌です。

認知症ケアという次元の問題ではなく、1人の人間と接し方として如何なものかと疑問に感じます。

しかし、病院で働いている中で、日々このような場面に出くわすことが大変多いです。そのような関わり方で良いのでしょうか?その人の事をしっかりとケアできているのでしょうか?

答えはノーです。

このような接し方で認知症の人のBPSDが悪化する可能性もあります。

ではどのような対応をとれば良いのでしょうか?以下の通りです。

・部屋の前必ずノックをする(返事がない場合)

(3回→3秒待つ→3回→3秒待つ→1回ノックで部屋へ入る→ベッドボードをノックする)

・返事を待って入室する

・自分が何者であるか伝えて、入室する

こうして書いてみると、当たり前のことですね。

ノックをするということは、認知症の人にとっては、覚醒を促すという効果があります。認知症の人と接する際は、しっかりと覚醒をした状態で行うということが前提になります。

ケアの準備

次に行うことは、ケアの準備です。

ケアの準備とは、ケアを行うにあたって、本人に合意を得ることです。

本人の同意を得られなければ、その行為は「強制ケア」となって、ユマニチュードの理念から離れてしまいます。

ここで大切なことは、合意を得るために3分以上の時間をかけないことにあります。

声かけを行い、同意を得られない場合は、時間をおいて伺うか、午前中でえあれば午後から伺うなど、時間をずらしてみましょう。時間をずらした場合でも、改めて出会いの場面から行う必要があります。

ここからは少しまとめて書きます。

・初めに、「あなたに会いに来ました」というメッセージを伝える。(用件をいきなり伝えない)

・その人が嫌がる言葉は使わない(お風呂やリハビリ、運動など)

・正面から近づく、相手の視線をとらえる、目が合ったら2秒以内に話しかける、体にいきなり触れない

・「見る」「触る」「話す」の技術を使う

ケアを行うにあたって注意したいことは、部屋を訪れると同時に「○○しに来ました。」と告げることです。確かに業務中に余裕がなく、ついそのようなことを行ってしまいますが、「○○さんに会いに来ました」ということを伝えると、その後のケアもスムーズにいくケースが多いです。

また、その人が嫌がる言葉を避けることで介入が上手くいくケースもあります。私もよく”リハビリ”への抵抗がある方に対しては”お散歩”等の言葉を使用します。

この場面でもユマニチュードの基礎技術をしっかり活用しましょう。

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知覚の連結

ケアの準備が整ったら次のステップへ移行します。

認知症の人へのケアとして、必要なことは知覚を2つ以上使うことです。

この知覚が不足するとポジティブなメッセージを込めたケアでも、ネガティブなメッセージを伝えてしまい、ケアの拒否に繋がります。

・「話す」「見る」「触れる」のうち2つを使用すること

・複数の知覚情報を矛盾させない

いくら丁寧な言葉遣いで接することが出来ても、いきなり腕をつかんで立たせたり、歩かせようとさせることで、ケアが上手く成り立たなくなることがあります

このような状態は知覚情報が一致していません。知覚情報を一致させるには、視覚・聴覚・触覚全てにポジティブなイメージを持たせる必要があります。

知覚情報を与える際には、与える知覚情報の方向性を揃えましょう。

ユマニチュードでは、視覚・聴覚・触覚の3つへ心地よい、ポジティブなメッセージを与える状態のことを「知覚の連結」と呼びます。

ユマニチュードではこの「知覚の連結」の状態を目指します。

感情の固定

認知症の人のケアが終了した際に行うことは、2人で、行ったことの「想起」です。

・ケアの内容を前向きに振り返る

・相手の行動を前向きに評価する(協力してくれたことなど)

・ケアを行った本人も良い時間を過ごすことが出来たことを伝える

・認知症の人に前向きな・ポジティブな感情を残す

ケアの最後はしっかりと「想起」し、ポジティブな記憶を残して終了しましょう。

再会の約束

ケアが終了し、その場を離れる時に、必ず再会の約束をします。

認知症の人も普通の人と同じ、社会人ですもんね。

アポイントを取ることで、「また自分のところに来てくれる」というポジティブな感情を与えることが出来ます。また、アポイントを取るということは、自分を1人の人間として、社会人として扱ってくれたという感情を与えます。

記憶の保持が困難な場合は、メモ紙などを使用します。

当たり前だけど必要なこと

以上がユマニチュードにおけるケアを行うにあたっての5つのステップです。

いざ自分で振り返ってみると、なかなかここまで行うことはできないと思います。しかし内容を見てみると、リハビリを行う際の介入開始時の方法としてはかなり優れていますし、理にかなっていると思いませんか?

初めて担当になった認知症でない患者様の部屋を訪れる時に、上に書いた様な事は行っていませんか?

この5つのステップは、社会人として当たり前な事をまとめているだけです。

当たり前なのですが、必要な事なのです。

少しでもこの考えが広まり、正しい認知症ケアが広まることを願っています。