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雑記

慰安的マッサージからの脱却

理学療法士として勤務する中でぶち当たる壁

「患者からマッサージをせがまれる」

「特に高齢者はリハビリ=マッサージという概念を持っている」

「前任者がマッサージだけを行っていたため、マッサージ以外を行うと嫌がられる」

こんな経験をしている方も多いと思います。

今回はそんな方々に対して私が行ったことを記したいと思います。

理学療法士はマッサージしたらダメなの?

これは理学療法士の間でも長い間議論されていることだと思います。

私の考えでは「マッサージしてもOK」です。

国の法律にもしっかりと記載されていますからね。

この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。

ー理学療法士及び作業療法士法より抜粋ー

 

徒手療法的にはマッサージには以下の効果があるとされています。

・長軸方向に走っていないコラーゲン組織を機械的刺激により、コラーゲン組織の形成を阻止する。また、長軸方向に走っている本来のコラーゲン組織をより強化する。

・軟部組織のモビライゼーションを行う。(軟部組織の伸張)

・固有受容器の刺激によって正常な運動感覚・協調性の修復をもたらす。

・治療する筋とその周囲の筋を反射的に緊張緩和に導く。

・機械的受容器の刺激による疼痛の軽減・・・など

しかし、臨床の場面で私が見るのは

「患者・利用者の満足度を上げる為のマッサージ」

つまりは「慰安的なマッサージ」

です。

この「慰安的なマッサージ」に関しては私は否定的です。その理由は以下の通りです。

患者・利用者が依存的になる

1番の理由は患者・利用者が依存的になることですね。頼られることは決して悪い気はしません。しかし、患者・利用者が依存的になることで良いことは1つもありません。

本来、リハビリテーションは患者・利用者の「社会復帰」を目的にしています。しかし、患者・利用者が依存的になることでその目的を阻害してしまいます。

マッサージを行ったときは「痛みが良くなった。」、「歩きやすくなった」等の感想を言うかもしれません。しかし、次回来られた時は「やっぱり痛いね」といって、結局何も変わらないことが多いです。

患者の満足度を上げることも重要ですが、慰安的マッサージを行うことでのデメリットは大変大きいです。

患者・利用者のADL向上に繋がらない

リハビリを行う時間は限られています。その大切な時間をマッサージに取られると、マッサージだけで時間が来てしまいます。

先程述べた通り、私たちのやるべき仕事は患者・利用者の社会復帰を目指すことです。マッサージを行うことではありません。

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私が実践した「脱・慰安的マッサージ」

ここからは私が実践した「脱・慰安的マッサージ」への取り組みです。

前任者から引き継いだら・・・

私は以前、通所リハビリに勤務しておりました。

別の部署から私が異動してからしばらくして理学療法士が1人退職する事が決まった為、私がその人の後を引き継ぐことになりました。

引き継いだ方達は要支援者の方が多かったのですが、実施内容は屋外歩行かマッサージのみでした。

そこの通所では漫然としたマッサージ、所謂慰安的マッサージが横行しており利用者もマッサージをされるのが当たり前だと思っているようでした。

私もちょうどその時期に「ペインリハビリテーション」に興味が湧いていた時期でもあり、慢性痛=認知行動療法が必要であるという事が分かっていました。

しかし、これまでの習慣が身についている利用者に「いきなりマッサージを辞めます!」とは言えません。

そこで私は手順を踏むことにしました。

資料の作成

まずは、慢性痛患者のためのセルフケアガイドブックを元に、高齢者にも分かりやすい資料を作成し、それぞれ説明を行いました。

その中で

➀急性痛と慢性痛の違い

➁マッサージや運動療法のエビデンス等の説明

➂取り組んでほしい事、理学療法士の役割・関わり方

を簡単な言葉で説明しました。

特に➂に関しては「痛み日誌」を作成し、日付やその日の痛みの程度、天気やその日の思ったことを書いていただくようお願いしました。

そして、通所に来たときに日誌の内容を確認し、コメントを返す、そしてその内容をリハビリメニューに取り入れることを始めました。

これを自分の担当で要支援者の方を中心に説明しました。

効果判定は?

もちろん効果判定をはっきりさせるために、事前に評価をしなきゃなりません。

そこで身体機能(TUG、6m歩行、10m歩行、握力)に加えて、心理的な評価として痛み評価表を自分で作成し答えて頂きました。心理的な評価項目は身体図、VAS、PCS、TSK、PDASをまとめたものです。

時間はかかりますが、大事なことですもんね。

説明の結果・・・

しかし、これまでのやり方に慣れてしまっている方がほとんどで、なかなか全員の承諾を得ることが出来ませんでした。

しかし、そんな中でも承諾していただいた方が2人いました。その2人は来所した際に痛み日誌の交換、セルフメニューの考案などを行いました。

本当は要支援者の方全員に実施してもらいたかったですけどね。

実際に実施してみて

実際に実施してみての感想です。

詳細なデータは以前の職場のものであるので破棄しましたが、数値的にはかなりの改善が見られました。

そして、1番変わったことは利用者の痛みに対する姿勢です。

これまでは痛みに関してはどこか”受け身”だった利用者さんでしたが、

「気持ちが落ち込むと痛みがひどくなる気がする。」

「痛みが強いはずなんだけど自分が好きなことをするときは痛みを忘れてしまってる。」

「以前は痛いと何もしたくなかったけど、痛いながらも運動をすれば少しは和らぐ気がする。」等、以前では聞くことがなかったことを言うようになりました。

次第に「今日はこんな運動をしてみたよ。」や「こういうときはどうすればいい?」など、より積極的な質問をされるまでになりました。

最初は不安でしかなかったですが、このような変化が利用者さんに起きたことは大変嬉しく思いました。

理学療法士に求められるもの

以上が職場で蔓延していた「慰安的なマッサージ」に対して行った行動です。

よく「理学療法士はマッサージをするべきではない。」、「いや、リハビリでもマッサージはする。」といった意見の言い合いを見ますが、はっきり言ってどっちでもいいです。

患者さんにとってはそんなことどうでもいいんです。

理学療法士に求められることは、「患者さんを治療の正しい方向へ導く」事です。その1つの方法としてマッサージがあるだけです。もちろんマッサージをしない方法もです。

しかし先程も述べた通り、漫然としたマッサージは患者・利用者の依存を生み出す危険性があります。

理学療法士には治療の引き出しが多く求められます。その人その人に合った治療法が必要です。

そのことを肝に銘じて日々精進しましょう!